謹賀新年
本年も、民藝の美に集ふ皆様の佳き年でありますやうに。
平成二十二年 元旦
日本民藝協会会長 水尾 比呂志
日本民藝協会が設立七十五周年を数へた昨年は、世界も日本も激動の度をいっそう増した世情でした。それでも、微かながら希望の灯を垣間見る出来事も無くはなかったと思へます。アメリカと我国の政治体制の変革は、数多の難題を抱へまた生起させつつも、より望ましい方向への一歩を認めることのできるものではなかったでせうか。
このやうな世の動きは、私たちの民藝運動にも勵ましとなってくれるでせう。終始変ることのない暮しの美への希求のもと、世の平安と無事を冀ふ歩みを、本年も続けて参りたいと存じます。
昨年は、柳宗悦師の生誕百二十年を記念する意義ある催しが、日本民藝館を中心に行はれましたが、協会も例年の行事に新たな方向を試みました。すでにお知らせしました(本誌六八三号、昨年十一月号)やうに、全国大会と夏期学校を併催した栃木県民藝協会の益子会場での、初めての試みです。栃木県協会には多大の御苦労をおかけ致しましたが、その成果は、民藝運動の進展に寄与するところ少くなかった、と考へられます。大会と夏期学校の性格を折衷するのではなく、双方の特色を保ちつつ、老・壮・青の活力を融合することが、民藝運動の新たな方向の緒となし得るのではないか、と期待されるのです。
ところで、本年は、柳宗悦師が逝かれて五十年の回忌に当ります。それに因み、師の不滅の名著『美の法門』が成った城端の地で全国大会を開催したい、とのお申し出が、かねてよりとなみ民藝協会からあり、平成二二年の第六四回大会は同地で開かれることに決りました。師の忌日は五月三日ですが、諸事繁夥な連休を避けて、旧暦の同日に当る六月五日を中心とする行事を、目下となみ民藝協会で準備中であります。「美の法門」の深意を改めて学び、私たちの今とこれからに活かすことを求める集ひにしたいものです。
柳師の民藝美思想は不朽です。その具現である日本民藝館とともに、日本民藝協会の存在と働きを世の平安な暮しに役立てることを、年頭の念願と致したく存じます。 |